・・・ ジェルテルスキーは、故国にいる間絶えず種々な頭字を肩書に持つ友人に煩らわされた。外国へ来ると、その土地によって、長かったり、短かったり、兎に角何等かの肩書ある知友を得ない訳には行かないのだ。 ダーリヤが、ビスケットの皿や砂糖を卓子に出・・・ 宮本百合子 「街」
・・・のパン種となったモウパッサンの頭字だろうか。マリアは「Mの愛の火に心を暖められ」ながらも、落付いて、自分がMと「結婚しようというような考は一つもない」こと、「二年前まで私は愛と思い込んでいた」ものだが、愛ではないということを自分にはっきり認・・・ 宮本百合子 「マリア・バシュキルツェフの日記」
・・・ただレーニンとローザ・ルクセンブルグとカール・リープクネヒトとの頭字のLを三ツあわせた記念日としてだけ思えないところがある。 二十世紀の人類生活の前進のため、このLという字を頭字にもった三人の人たちの生涯は、革命暦の上にあらまし印刷され・・・ 宮本百合子 「三つの愛のしるし」
出典:青空文庫