・・・それを十分に考えてみることなしに、みずから指導者、啓発者、煽動家、頭領をもって任ずる人々は多少笑止な立場に身を置かねばなるまい。第四階級は他階級からの憐憫、同情、好意を返却し始めた。かかる態度を拒否するのも促進するのも一に繋って第四階級自身・・・ 有島武郎 「宣言一つ」
・・・九十の老齢で今なお病を養いつつ女の頭領として仰がれる矢島楫子刀自を初め今は疾くに鬼籍に入った木村鐙子夫人や中島湘烟夫人は皆当時に崛起した。国木田独歩を恋に泣かせ、有島武郎の小説に描かれた佐々木のぶ子の母の豊寿夫人はその頃のチャキチャキであっ・・・ 内田魯庵 「三十年前の島田沼南」
・・・『いらっしゃい』とお俊は起ってゆきましたが、しばらく何かその男とこそこそ話をしていましたが、やがて私の枕元に参りまして、『頭領が見えました、何かあなたにお話ししたいことがあるそうです』 なんの頭領だろうと思っていますうちに、その男は・・・ 国木田独歩 「女難」
・・・白軍の頭領のカルムイコフは、引渡された過激派の捕虜を虐殺して埋没した。森の中にはカルムイコフが捕虜を殺したあとを分らなくするために血に染った雪を靴で蹴散らしてあった。その附近には、大きいのや、小さいのや、いろいろな靴のあとが雪の上に無数に入・・・ 黒島伝治 「氷河」
・・・往年、その事大主義的な天質に従って学生運動の頭領となった一人の男が、同じ天質に従って今日は文化に対する統制の旗ふりとなっている現実である。小林多喜二的なものや芥川龍之介的なものが、発展的に批判されなければならないのは、もとより明かであるが、・・・ 宮本百合子 「数言の補足」
・・・プレハーノフはこの作品が発表された当時、既にメンセビキの頭領としてはっきりレーニンの党と対立していた。プレハーノフにとっては、これまでになく明らかな輪廓をもって自分に対立する大衆の姿を、ゴーリキイが描き出したことによって「母」を憎んだのであ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人」
出典:青空文庫