・・・おれさまはな、ええ、めくらとんびの後見人、ええ風引きの脈の甥だぞ。どうだ、どっちが偉い」「何をっ、コリッ、コリコリッ、カリッ」「まあまあそう怒るなよ。これは冗談さ。悪く思わんでくれ。な、あの二人さ、かあいそうだよ。いいかげんにまとめ・・・ 宮沢賢治 「シグナルとシグナレス」
・・・私が服装を整えたり、食事をしたりするのを、片寄せた床の中から、風邪引きの子供のように眺めた。「こんなものさせるから、痛い目をしたり不愉快な思いをする――と、じゃ誰もしないじゃないの」「――我慢していらっしゃい、いい子だから。大痘痕に・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
・・・寒い朝ですない。風邪引きなさいますよ。 若い女中は、私の横顔を何か、さがし物でもする様に隅から隅まで見て居る。「大丈夫だよ。今年は、冬が早く来る様だねえ。と云って居ると土間の処で、「お寒うござりやす。」・・・ 宮本百合子 「農村」
出典:青空文庫