・・・ 私どもは、何々という島では、兵士の何割が栄養失調で餓死したという報告を、やつれ果てた復員兵から告げられている。一方に、大小の戦争犯罪人としての将官が、リストされている。しかし、兵と共に飢えて死んだという将校が、何人私たちに知られている・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
・・・自分の生命を、一たん否定して闘っても来ている。餓死する人間も見たであろうし、その人たち自身、栄養失調で這って帰って来たかも知れない。何故そこから新しい文学が生れないのだろうか。歴史的な野蛮行為のなかにまきこまれて、苦悩し、ひそかに泣き、人間・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・ 世界にあふれる凡そ四千万人以上の餓えた失業プロレタリアートと、いつその失業群につきおとされるかわからない就業労働者とは互に手をつなぎ、このジリジリ迫って来る止めどのない餓死から身を守ろうと戦ってるのだ。 世界じゅうのどんな意識の低・・・ 宮本百合子 「なぜソヴェト同盟に失業がないか?」
・・・資本主義のゆきづまりはひどくなるばっかりで、行手にあてのない世界四千万の失業者とその家族とが、目の前に餓死を眺めて坐っている。 云うに云えないそのプロレタリアートの苦しい有様を利用して、資本主義国では、不景気がつのればつのるほど、弱い婦・・・ 宮本百合子 「ひとごとではない」
・・・マダム・ブーキンは彼女の映画会社へ、餓死しそうになっていた彼を紹介して呉れた。マリーナ・イワーノヴナは夫婦とも裁縫師で、ジェルテルスキーは妻のための内職を、マリーナ・イワーノヴナのところから貰って来ていた。今もいる。――恐らく彼が、片手でル・・・ 宮本百合子 「街」
出典:青空文庫