・・・けれども、同時代の作家でたとえばピリニャークが、馬鈴薯の袋をかついで、鉄道の沿線を、あっちにゆきこっちにゆくうちに、蓄積された印象に文筆の表現を導かれはじめたのは偶然であったにちがいない。イヴァーノフが「装甲列車」を書いたのにも、積極的な意・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ ナポレオン伝において、大革命につづく混乱期に列国の旧勢力とフランス内の旧勢力とがどのように結托して、名誉ある本命の血から帝政と王制復古の馬鈴薯を生やしたかという要が解剖されていないならば、こんにちの日本のわたしたちにとって読むべき真実・・・ 宮本百合子 「なぜ、それはそうであったか」
・・・表面上は立派に自由の権利を持って居る様では有るけれ共、内実は、まるでロシアの農奴の少し良い位で地主の畑地を耕作して、身内からしぼり出した血と膏は大抵地主に吸いとられ、年貢に納め残した米、麦、又は甘藷、馬鈴薯、蕎麦粉などを主要な食料にして居る・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・米の不足を補うために、東京市は馬鈴薯の種をとりよせ、それを十坪以内の土地の利用者に限って分ける、という話である。その記事をよんだときも、何となし十坪以内の地べたを利用して植る、ということに、ぴったりしない感じがした。そういう面積を標準とした・・・ 宮本百合子 「昔を今に」
・・・ けれども、今日は如何うかして、小学校の子供のように、お婆さんは只コックリと頭を下げた限りで、ぼんやりと天日に頭を曝した儘、薄紫の愛らしい馬鈴薯の花を眺めて居る。「どうなさいました。家へ入って少し休みましょう 私はお婆さんを縁側・・・ 宮本百合子 「麦畑」
出典:青空文庫