・・・そして尻をしたたかにぶん殴られたように前方へ驀進した。隊長は、辷り落ちそうになりながら、「おォ、おォ、おォ!」と悲しげな声を出した。「誰れか来て呉れい!」彼は、おおかた、口に出して、それを叫ぼうとした。 左側の樅やえぞ松があ・・・ 黒島伝治 「パルチザン・ウォルコフ」
・・・ どこかの山中の嶮崖を通る鉄道線路の夜景を見せ、最後に機関車が観客席に向かって驀進するという甚だ物々しいふれだしのあった一景は、実は子供だましのようなものであった。舞台の奥から機関車のヘッドライトが突進して来るように見えるのは、ただ光力・・・ 寺田寅彦 「マーカス・ショーとレビュー式教育」
・・・そして再び場末のごたごた中に驀進した。 デパアトメント・ストアだ。家具大売出し! 十八ヵ月月賦!「キリストは生きている!」教会だ。「質」「古着」 高い建物と建物との隙間に引込んで煤けきった大鉄骨が見えた。黒い、日・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫