・・・著者が十二年間の獄中生活から解放されてから、『敗北の文学』『人民の文学』が出版された。著者が序文でいっているように「敗北の文学」は一九二九年に二十三歳でかかれたものであり、『レーニン主義文学闘争への道』に収められていた。『人民の文学』はその・・・ 宮本百合子 「巖の花」
・・・ 株で儲けたと云う須藤が、彼方此方の土地開放の流行の真意を最も生産的に理解しない筈はない。恐らく徳川幕府の時代から、駒込村の一廓で、代々夏の夜をなき明したに違いない夥しい馬追いも、もうあの杉の梢をこぼれる露はすえない事になった。 種・・・ 宮本百合子 「犬のはじまり」
・・・ 自由という名は耳と心に快くひびくが、食糧事情の現実は、わたしどもの今日に、饑餓と大書してそびえ立っている。開放と不安との間に、橋の架けかたを知らされずに近代を通ってきた正直な日本の幾千万の人々が、ひしめいているのである。 文学が、・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・だが、今日の文学が、過去の或る期間においては十分云い切る自信を与えられなかった作者自身のうちに在るそういう社会感情の一面を開放しつつあるという現象は、果して今日の作家の、より高い、人間的・文化的自由の獲得を意味しているのであろうか。「左・・・ 宮本百合子 「落ちたままのネジ」
・・・安倍能成氏は文部大臣となって女子に全国の専門学校、大学を開放し得るであろうか、ここに試金石の一つがある。 大衆課税 去る十二日の夕餉のテーブルに、なかなか味なおくりものがあった。この日、ラジオの解説の時間は、戦・・・ 宮本百合子 「女の手帖」
・・・もしほんとに科学は人間に関しないのであるならば、どうしてキュリー夫人は、ラジウムの権利を独占して儲けようとせず、ひろく全世界の人間の幸福のためにと開放したろう。そういう潔白な美しい行為は人間と科学との結ばれようの正しさを、おのずから示してい・・・ 宮本百合子 「寒の梅」
・・・瀝青ウラン鉱からラジウムを引き出すことに成功した彼らが、その特許を独占して商業的に巨万の富を作ってゆくか、それとも、あくまで科学者としての態度を守ってその精錬のやり方をも公表し、人類科学の為に開放するか、二つの中のどちらかに決定する種類のも・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・、キュリー夫妻が世間の人たちが誰でもやっているとおり自分の発見に特許をとって、ラジウム応用のあらゆる事業から莫大な富を独占するか、それとも、そんなことは一切せず、科学上の発見を人類の進歩のためにひろく開放するか、二つに一つの態度をきめさせる・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人の命の焔」
・・・当時のミュンヘン市は、ドイツのどの都市よりも芸術に対して開放的で、進歩を愛する空気をもっていた。その時分すでにミュンヘン市の美術界は、フランス印象派の影響が支配的になっていた。ミュンヘンで催された国際美術展をみて、ケーテはドイツの従来の絵画・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・昔の離宮が今は勤労者のための愉快な公園博物館として開放されている。景色のいい池の辺にある一つの旧宮廷用の小建物が図書館出張所になっていた。労働組合員は、身分証明の手帖で、ごくやすい保証金をおさめ、自由に本の借り出しをされる。わたしもそこで随・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
出典:青空文庫