・・・評論家、ジャーナリスト、歌人、俳人で検挙された人たちも少くなかった。 執筆この年は文学評論集『文学の進路』、『私たちの生活』――婦人のための評論集――が出版された。一九四二年この年はまだ健康を回復せず眼も見・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・ 彼の人がそんな悲しい日を送って居るときいた十日程後、私は到々思い切って手紙を書いた。 雨が静かに降って居た。 家人から遠ざかった私の書斎は夕飯時でさえやかましくない程なのに、更けた夜の淋しいおだやかさと、荒れた土の肌をうるおお・・・ 宮本百合子 「ひととき」
・・・「佳人之奇遇」「雪中梅」等の筆者達は、福沢諭吉を新時代の大選手として、急テンポに欧化し、資本主義化しなければならなかった当時の日本の社会感情の先達となった。自由民権の云われた時代の作物が、今日なお面白く、或る気魄によって読ませるのは、筆者の・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
・・・武家の棟梁とその家人との関係が、全国的な武士階級の組織の脊梁であった。そうして初めは、彼らの武力による治安維持の努力が実際に目に見える功績であった。しかし後にはただ特権階級として、伝統の特権によって民衆の上に立っていたのである。しかし民衆運・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫