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・・・幾回かの襲撃の間に、うちのぐるりもひどくやられて、唐子の前髪のように動坂のところから団子坂にかけて浅い奥ゆきが残った。 動坂の上にたって今日東の方を眺めると、坦々たる田端への大通りの彼方にいかにも近代都市らしい大陸橋が見え、右手には道灌・・・
宮本百合子
「田端の汽車そのほか」
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・・・床の間にさきごろかけてあった画をおぼえているだろう。唐子のような人が二人で笑っていた。あれが寒山と拾得とをかいたものである。寒山詩はその寒山の作った詩なのだ。詩はなかなかむずかしいと言った。 子供は少し見当がついたらしい様子で、「詩はむ・・・
森鴎外
「寒山拾得縁起」