・・・という親心と息子の心を吸収して、百姓の息子でも、軍人ならば大将にだって成れる道として、軍国日本に軍人の道が開かれていたのである。日本の大学は、人類の理性と学問に関するアカデミアであるより以前に、官僚と学閥の悪歴を重ねた。見えない半面で軍国主・・・ 宮本百合子 「新しいアカデミアを」
・・・ それらの急進的な若い男女があふれるような活力と感受性とを傾けて、学内の活動などに吸収されて行った有様は、めざましいものであったろう。ところが彼らが研究会やなにかでイデオロギー的に獲得した輝かしい未来の社会、両性関係の見とり図と、現実の・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・けれども、時局の要求する生産拡充への大努力によって重工業、化学、食料、織縫などには、大量に女の力が吸収されつつある。全国に十万人も熟練工が不足を告げているという事実は、今日の大問題とされているのである。処々の大工場、実務学校などで熟練工の養・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・ 新しい力が、古い根づよいものによって決められ、しかしついにはいつか新しい力が農村の旧習を修正してゆく現実の有様を描いてある。こういう本は字引がいらない。 十一月三日。 時計がまた一時間進んだ。すっかり極東時間――日本と同じ・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・自分というものを押し出したような強さではなくて、宗達は自然、動物、人間それぞれなりの充実感によりそって行って、そこへはまり込み、芸術に吸収して来ているのである。 自然人らしくさえある宗達が、画面に様式化を創めたのは興味深い。彼にとっては・・・ 宮本百合子 「あられ笹」
・・・女としての生活がこれまでもそれによって悩んで来た種々様々の矛盾は、それなりで、より広く社会活動の渦中に投げこまれあるいは吸収されている状態であると思う。近頃早婚と多産とが奨励されはじめている。それはなんとなく賑やかで楽しげな声である。だが、・・・ 宮本百合子 「異性の間の友情」
・・・一九二八年には百十万人もあった失業者を全部吸収したが、それでもまだ足りない。工場によっては苦しまぎれに、賃銀をよくして労働者を集めようとする。そこで、一九三〇年の冬に大清算された「飛びや」が現れた。つまり、五十哥でも多い方へ多い方へと、工場・・・ 宮本百合子 「「鎌と鎚」工場の文学研究会」
・・・ 僅に、九州や中国の、徳川からの監視にやや遠い地域の大名たちだけが、密貿易や僅かの海外との交渉で、より新しい生活への刺戟となる文化を摂取した。維新に、薩長が中心となったということは、深い必然があったのである。 ところで、この明治維新・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・ これは、別府でふと心づいたことだが、九州を歩いて見、どこの樹木でも大体本州の樹より細幹とでも云うのか、すらりと高く繊細な感じをもっているのは意外であった。勿論釣合の上のことで、太い大木だって在る。けれども決して、北国の樹のように太短く・・・ 宮本百合子 「九州の東海岸」
・・・五年間にその半数を生産の中に吸収出来ればよいと予定されていた。ここでも亦、愉快な予定はずれが生じた。――生産の予想外の拡大は予想外な速度で労働力を生産の各部へ吸い込んでしまった。失業者はソヴェト同盟から消えた。これまでは、未就業労働者に職場・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
出典:青空文庫