・・・その家は今でも連綿として栄え、初期の議会に埼玉から多額納税者として貴族院議員に撰出された野口氏で、喜兵衛の位牌は今でもこの野口家に祀られている。然るに喜兵衛が野口家の後見となって身分が定ってから、故郷の三ヶ谷に残した子の十一歳となったを幸手・・・ 内田魯庵 「淡島椿岳」
・・・ 二十五年前には文学士春の屋朧の名が重きをなしていても、世間は驚異の目をって怪しんだゝけで少しも文学を解していなかった。議会の開けるまで惰眠を貪るべく余儀なくされた末広鉄腸、矢野竜渓、尾崎咢堂等諸氏の浪花節然たる所謂政治小説が最高文学と・・・ 内田魯庵 「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」
・・・ ある種の戦争責任者である議会人がさきに軍官財閥の三閥を攻撃している図も、見っともよい図ではなかった。がかつて右翼陣営の言論人として自他共に許し、さかんに御用論説の筆を取っていた新聞の論説委員がにわかに自由主義の看板をかついで、恥としな・・・ 織田作之助 「終戦前後」
・・・近衛公が議会で、日本主義というのは、なんですか? と問われて、さあ、それは、一口でこうと説明は、どうも、その、と大いに弱っていたようであったが、むりもないことと思った。 象徴で行け。象徴で。 そうなったら面白い。「日本主義とはな・・・ 太宰治 「多頭蛇哲学」
・・・デモクラシー。議会。選挙権。愛。師弟。ヨイコ。良心。学問。勉強と農耕。海の幸。」等である。幕あく。舞台しばらく空虚。突然、荒い足音がして、「叱るんじゃない。聞きたい事があるんだ。泣かなくてもいい。」などという声と・・・ 太宰治 「春の枯葉」
・・・今日は議会を見に行くはずである。もうすぐにパリイへ立つ予定なのだから、なるたけ急いでベルリンの見物をしてしまわなくてはならないのである。ホテルを出ようとすると、金モオルの附いた帽子を被っている門番が、帽を脱いで、おれにうやうやしく小さい包み・・・ 著:ディモフオシップ 訳:森鴎外 「襟」
・・・しかし、悪いことを咎めるのが大切であると同時に善いことを勧めるのもなおさら肝要である。議会でも暴露の泥仕合にのみ忙しくして積極的に肝要な国政を怠れば真面目な国民は決して喜ばないであろうと同様に、学位授与の弊害のみを誇大視して徒らにジャーナリ・・・ 寺田寅彦 「学位について」
・・・ そこへ、NT君が訪ねて来た。議会の傍聴に連れて行ってやろうというのである。自動車をそこに待たしてあるという。 あまり自慢にならない事であるが、自分はまだこの年までつい一度も帝国議会というものを見た事がなかった。別に見たくないという・・・ 寺田寅彦 「議会の印象」
・・・どの損害であるのに一般世間はもちろんのこと、為政の要路に当たる人々の大多数もこれについてほとんど全く無感覚であるかのように見えるのはいったいどういうわけであるか、実に不思議なようにも思われるのである。議会などでわずかばかりの予算の差額が問題・・・ 寺田寅彦 「函館の大火について」
・・・て大多数の政党員ないし政治に興味をもつ一般人、それからまじめな商業や産業に従事している人たちにとってたとえば仏国の大統領が代わったとかニューヨークの株が下がったとか、あるいは北海道で首相が演説したとか議会で甲某が乙某とどんなけんかをしたとか・・・ 寺田寅彦 「一つの思考実験」
出典:青空文庫