・・・「お前の国では、庭先に燃きつけはころがって居るし、裏には大根が御意なりなんだから、御知りじゃああるまいが、東京ってところはお湯を一杯飲むだって、ただじゃあないんだよ。 何んでも、彼でも買わなけりゃあならないのに、八百屋、魚屋に、・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・p.281○狂妄な帝国主義は驕傲を僧衣に包んで「神の御意なり」と叫ぶのである。○先ずもってわれわれヨーロッパの世界は、この新しい神の国、ロシアという世界国家の中で崩壊しなければならず、然るのち初めて救われるのである。文字通り彼は云っ・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・ これからそろそろと御意なりに落しにかかろうとする獲物に対する非常に粗野な残酷な愛情に似た一種の感情の発露なのである。 年寄りは、着々成功しかかる自分の計画の巧さに、我ながら勢立ってますます元気よく朝から晩まで、馳けずりまわって働い・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・ 一俵まけてくれ、と菊太が願うのは祖母に向ってで私にではないけれ共、やっぱり祖母が思うと同じ様に、そんなに御意なり放題にして居てはいけない、と思う。 何故そんなに、いつもいつもきっぱり出来ないんだろう、と思う。 私までが菊太に対・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・小姓 御意の通りでございます、陛下。王 呼んでおくりゃれ。小姓下手から去る。同じ口から法王が出て来る。前の幕と同じ服装、手に聖書を持つ。王の前に座ると後を沢山の供人が守る。法 お達者で――王 大・・・ 宮本百合子 「胚胎(二幕四場)」
・・・「どうじゃ、子供は帰ったか」と、佐佐が声をかけた。「御意でござりまする。お菓子をつかわしまして帰そうといたしましたが、いちと申す娘がどうしてもききませぬ。とうとう願書をふところへ押し込みまして、引き立てて帰しました。妹娘はしくしく泣・・・ 森鴎外 「最後の一句」
出典:青空文庫