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・・・顧みて口先ばかり景気のいい徹底家の言葉に注意を向けると、思わずその内容の空虚を感じないではいられないのである。 けれども「あきらめ」に達したゆえをもって先生は人生の矛盾不調和から眼をそむけたわけではなかった。先生はますます執拗にその矛盾・・・
和辻哲郎
「夏目先生の追憶」
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・・・そこでこの三人の間の気合いの合致が何よりも重大な契機になる。人形が生きて動いている時には、同時にこの三人の使い手の働きが有機的な一つの働きとして進展している。見る目には三人の使い手の体の運動があたかも巧妙な踊りのごとくに隙間なく統一されてな・・・
和辻哲郎
「文楽座の人形芝居」