・・・遅配、欠配、棚上げは改善されませんでした。人民の大部分が、筍生活から玉葱生活にうつってゆく深刻な段階の中途にたちどまって一九四七年のおめでとうは、云いかわされたのでした。 さて、ことし、わたしたちはどんなおめでとうを云ったでしょう。・・・ 宮本百合子 「今年こそは」
・・・ああ、ああ、けっぱいけっぱい。 床に入ってまで祖母はつぶやいて居た。よっぽどいやだと見える、気の毒な。 田地の事、作物の事、小作男の不平やら、思わしい収獲を得ない田畑の物などの話は聞いても、それは只、話す人の気休めのために話すの・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・ それこそ七里けっぱい。七里けっぱい。 ――けれども、せきの困るのはここであった。どうして体よく追い払おう。せきは、始めて言葉の通じない不便を痛感した。日本語でなら、うまく気を損ねないように何とでも云う法がある。男の異人の眼の碧さ、あの・・・ 宮本百合子 「街」
出典:青空文庫