・・・ 九 カルネラ対ベーア 拳闘というものはまだ一度も実見したことがない。ただ、時々映画で予期以外の付録として見せられることはあるが、今までこの競争に対して特別の興味をよびさまされることはついぞなかったようである。し・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・ 拳闘場の鉄梯子道の岐路でこの二人が出会っての対話の場面と、最後に監獄の鉄檻の中で死刑直前に同じ二人が話をする場面との照応にはちょっとしたおもしろみがある。 ゲーブルの役の博徒の親分が二人も人を殺すのにそれが観客にはそれほどに悪逆無・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・従って未来の映画のあらゆる可能性もまたこの根本的な差違の分析によって検討されるであろうと思う。 それにはまず物理的力学的な世界像を構成する要素が映画の上にいかなる形で代表されているかを考えてみるのが一つの仕事である。 映画の観客は必・・・ 寺田寅彦 「映画の世界像」
・・・眠っているように思っている植物が怪獣のごとくあばれ回ったり、世界的拳闘選手が芋虫のように蠢動するのを見ることもできるのである。 時間の尺度の変更は、同時に、時間を含むあらゆる量の変更を招致することはもちろんである。まず第一に速度であるが・・・ 寺田寅彦 「映画の世界像」
・・・それが近代科学の基礎として採用され運用されるようになって以来いっそうの検討と洗練を加えられて、今日では昔の人の思い及ばなかったような複雑でしかも整然と排列された一大系統を成している。もっともそういう方法は普通の科学の教科書には、あらわにはど・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・これは地形学者の再検討をわずらわしたい問題である。 以上述べたものの多くは、言わば「並行縞」と呼ばれるべき形態のものであったが、このほかになお「放射縞」と言わるべきものがある。もっとも、上述の中でも、噴泉塔の縞や、鈴木君の円板の割れ目な・・・ 寺田寅彦 「自然界の縞模様」
緒言「日本人の自然観」という私に与えられた課題の意味は一見はなはだ平明なようで、よく考えてみると実は存外あいまいなもののように思われる。筆を取る前にあらかじめ一応の検討と分析とを必要とするもののようである。・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・アメリカン・レビューにはそういう古典的な意味での音楽などはない代りに、オリンピックのグラウンドや拳闘のリンクに見らるる活力の鼓動と本能の羽搏きのようなものをいくらかでも感ずることが出来るのであった。 それほどにも国々の国民性がこんな演芸・・・ 寺田寅彦 「マーカス・ショーとレビュー式教育」
・・・ 母親は、それで見当がついた風で、「すると、やっぱりシャカイシュギかい?」 などという。―― 三吉は、ときどき、そのディーツゲンをおもいうかべることで、自分に勇気づけていた。マルクスやエンゲルスとは別個に唯物弁証法的哲学をう・・・ 徳永直 「白い道」
・・・むかし見当橋のかかっていた川○八丁堀地蔵橋かかりし川、その他。 日本橋区内では○本柳橋かかりし薬研堀の溝渠 浅草下谷区内では○浅草新堀○御徒町忍川○天王橋かかりし鳥越川○白鬚橋瓦斯タンクの辺橋場のおもい川○千束町小松橋かかりし溝○吉・・・ 永井荷風 「葛飾土産」
出典:青空文庫