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・・・特に、夕日が西に傾いて、その赤い光線が樹々の紅葉を照らす時の美しさは、豪華というか、華厳というか、実に大したものだと思った。しかしその年の紅葉がそういうふうに出来がよいということの見透しは、その間ぎわまではつかないのである。手紙で打ち合わせ・・・
和辻哲郎
「京の四季」
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・・・それが地獄の劫火に焚かるべき罪であろうとも、彼はその艶美な肌の魅力を斥けることができない。そこに新しい深い世界が展開せられている。魂を悪魔に売るともこの世界に住むことは望ましい。 それが新時代の大勢であった。地下の偶像は皆よみがえって、・・・
和辻哲郎
「『偶像再興』序言」