・・・ジイドは、信じられぬ程の偏執で、その必要は、スターリンの犠牲であり、欺かれたもの達である労働者の上に死刑執行人と、搾取者とが君臨して「ロシアの労働者は幸福であると、フランスの労働者に信ぜしめる為の莫大な宣伝費をつか」うためであると云っている・・・ 宮本百合子 「こわれた鏡」
・・・ケレンスキーがそれを全露労働者兵卒ソヴェト中央執行委員会に貸した。二十五日の夜、徹宵この敷石道の上をオートバイが疾走し篝火がたかれ、正面階段の柱の間には装弾した機関銃が赤きコサック兵に守られて砲口を拱門へ向けていた。軍事革命委員会の本部だっ・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・と発言して、布施弁護士によってその要求を具体化した被告飯田七三、もと三鷹電車区検査係、同分会執行委員長は、午後の法廷でさらに発言を求めて次の様に述べた。「最初申しあげた通りこの事件がいわゆる普通の刑事事件と違うということをもっとも端的にあら・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・ 葦叢をのぞき込むようにして膝行出た禰宜様宮田の目には、フト遠い、ズーッと遙かな水の上に、何だか奇妙なものがあがいているのが写った。 鳥でもないし、木片でもない。「今時分人でもあんめえし……」 浮藻に波の影が差しているのだろ・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・公判、懲役〔二〕年、執行猶予〔四〕年を言い渡された。予審と公判とを通じて私は文学の階級性を主張することができなかった。七月。保護観察所によって保護観察に附せられた。警視庁の特高課長であった毛利基が主事をしていた。毛利基は宮本の関係した党・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・獄中生活で健康を害し執行停止され、現在は作家の活動をされている。島木氏が四国の方で農民組合の活動をしていたことは恐らく今日では周知の事実であろう。作家島木氏として現れたのは出獄後のことである。その他多くの人々がそれぞれの道の違いはあっても、・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・ 野上彌生子の理性的な創作方法とはちがって、はるかに素朴な生活力ながら、やはり調べた題材による作品を送り出して来た小山いと子が、最近の「執行猶予」で、経済違反の弁護によって成り上ってゆく検事出身の弁護士とその家庭、現代風にもつれる男女の・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・そして、中央執行委員会の中の、質問応答掛で働き出した。 革命とともに数百万の女が、ソヴェト同盟の新社会の礎を据えるために男と並んで働きだした。八時間労働。同一労働に対しては男女同賃銀。婦人の活溌な社会労働は、完全な母性、幼児保護の設備な・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・やはり立会演説の公開の席上で、社会主義即時断行と天皇制護持と、決して両立し得ない二つのことを並べて綱領としている一政党の立候補者、執行委員の某氏は、聴衆の面前で、個人としての見解は必ずしも自分の属す政党の意見とは一致していないが、党代表とし・・・ 宮本百合子 「矛盾とその害毒」
・・・刑を執行するまでには、まだ時がある。それまでに願書を受理しようとも、すまいとも、同役に相談し、上役に伺うこともできる。またよしやその間に情偽があるとしても、相当の手続きをさせるうちには、それを探ることもできよう。とにかく子供を帰そうと、佐佐・・・ 森鴎外 「最後の一句」
出典:青空文庫