・・・併し、私が苦心をした結果、出来損ったという心持を呑み込んで、此処が失敗していると指摘した者はなく、また、此処は何の位まで成功したと見て呉れた者もなかった。だから、誉められても標準に無交渉なので嬉しくもなければ、譏られても見当違いだから、何の・・・ 二葉亭四迷 「余が翻訳の標準」
・・・この度はシカゴ畜産組合の顧問として本大祭に御出席を得只今より我々の主張の不備の点を御指摘下さる次第であります。一寸紹介申しあげます。」とこう云うのでありました。私たちは寛大に拍手しました。 マットン博士はしずかにフラスコから水を呑み肩を・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・ 党、それを支持するプロレタリアートの一面の誤謬は指摘され、笑われている。プロレタリア的な積極的な見通しが、全脚本を通じてない。そこで、大衆は疑問をもち始め「赤紫の島」は上演を禁じられた。 この例でもわかるように、闘争的プロレタリア・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・ アメリカやイギリスその他の国々で、看護婦の私的生活は、職務からすっかりきりはなされていて、例えば結婚して妊娠すれば、母となるという仕事は、看護婦という職業の面からきりはなされて、その人個人の処置にゆだねられます。モスクワの病院では、労・・・ 宮本百合子 「生きるための協力者」
・・・どっさりの異性の知人というものが、あるいは同僚があるような公共的な生活が先ずあって、そういう土台からもっと私的なこまかい条件の加わって来る友情も生れる空気が求められるべきだと思う。異性の友情という、どことなし従来の婦人雑誌のトピック向きな空・・・ 宮本百合子 「異性の友情」
・・・それはみんな意志表示の習慣をもっていないことを語る特徴だと指摘された。そして日本が民主的な社会となるためには、日本の男も女も、はっきりめいめいの意志と判断とにたってイエスかノーかを表現し、拒絶したいことは、あいまいに笑ってすぎないではっきり・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・ドミトリーは、彼女との私的関係で工場の仕事までを動かそうとするのであろう。「私は自分の仕事まであなたの犠牲には出来ない。」「じゃつまり何か……万事終りか?」「――問題をそういう風に持ってくるなら、私はあなたから去るしかないじゃあ・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
・・・に讚歎するとき若い婦人たちはそれぞれの主人公たちの伝奇的な面へロマンティックな感傷をひきつけられ、科学というとどこまでも客観的で実証的な人間精神の努力そのものの歴史的な成果への評価と混同するような結果をも生むのである。 婦人の文化の素質・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・勤労階級の解放というような大事業をめざしている共産党員がそういうことについて気をくばることは私的な些事であるかのように言う人がある。しかし三・一五の顛落者が金と女にルーズであったことを忘れてはならない。それからのちあらわれたスパイも金と女に・・・ 宮本百合子 「共産党とモラル」
・・・ 黄銅時代の為に、 トルストイの性慾論中より、「愛する者とのみ結合しようとするのは――結婚に依ると依らざるの別なく、よし又詩的に小説的に理想化せられ得るとしても――多くの人々が立派なものと思って居る豊富な美食を求めよう・・・ 宮本百合子 「結婚に関し、レークジョージ、雑」
出典:青空文庫