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・・・二十一歳の青年で、零の置きどころに意識をさし入れたということは、あらゆる既成の観念に疑問を抱いた証拠であった。おそらく、彼を認めるものはいなかろうと梶は思った。「通ることがありますか。あなたの主張は。」と梶は訊ねた。「なかなか通りま・・・
横光利一
「微笑」
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・・・他人の内に穢ないもののある事を見いだすのは、要するに自分の内にも同じもののある証拠に過ぎませんでした。五 あまりジメジメした事ばかりを書いてすみません。しかしあなたに訴えれば私の胸はいくらか軽くなるのです。 私たちが今矮・・・
和辻哲郎
「ある思想家の手紙」