・・・そこへ巧みにつけ入って、ドイツ民族の優秀なことや、将来の世界覇権の夢想や、生産の復興を描き出したヒトラー運動は、地主や軍人の古手、急に零落した保守的な中流人の心をつかんで、しだいに勢力をえ、せっかくドイツ帝政の崩壊後にできたワイマール憲法を・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・印度をはじめとするアジアの諸国は、そのゆたかな天然の資源と、生産の発達が遅れている半封建的社会の条件を利用されて、ヨーロッパの資本主義の植民地または半植民地として、土着の民族のいたましい生活がつづきました。 第二次世界大戦ののち、アジア・・・ 宮本百合子 「新しいアジアのために」
・・・きたるべき選挙に今日の政府は勝算をもっているかもしれない、それだから組閣のはじめに用心深くさまざまの疑獄事件にひっかかりそうな閣僚をさけました。社会党のくされぐあいがあんまりひどかったおかげで吉田内閣にそれよりはましな人のあつまりのような利・・・ 宮本百合子 「泉山問題について」
・・・といわれたケーテは、今やドイツの誇りとして、あらゆる方面からのぎょうぎょうしい新たな称賛と敬意とを表された。 同時に、ケーテの芸術が真に勤労者生活を描いているからこそ生じている社会的な迫力を、ぼんやりとただ愛という宗教的なものとして解釈・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・未来のために与えられる一つの援助は、過去に向って与えられる賞讚よりも常に高貴であるという言葉を、新たな感動をもって思い浮べる次第です。〔一九四〇年五月〕 宮本百合子 「健康な美術のために」
・・・というのは、これが翻訳小説であったならば随分佳作として称讚したのではないかと云うこと。おかしな云い方だが、日本の小説性格形成の過程と、西洋的のとは、根本的に相違があるのではないか。」 大体以上のように武田氏は云われている。 一つの小・・・ 宮本百合子 「現実と文学」
・・・等の様な賞讚は或は受けられなかったかもしれない。 時代のためも有ろう。けれ共、私は一葉女史と紅葉山人の作品にはその形式技巧や筆致の上にはこの上なく感心はしながらも、材料と思想が何だか物足りぬ。 まだ、ろくに「いろは」も書けない様なも・・・ 宮本百合子 「紅葉山人と一葉女史」
・・・ ジイドは、ソヴェトに対して抱いていた自分の信頼、称讚、喜悦をかくも深刻に痛ましく幻滅の悲哀に陥れ、労働者を欺いている者はソヴェトの一部の特権者と無能な国内・国外の阿諛者達であるとしている。「勝負はスターリンにしてやられ」民衆は悉く・・・ 宮本百合子 「こわれた鏡」
私は、最近米国の所謂文壇が、どんな作品を歓迎し称讚しているかは知らない。が、ほんの一寸でも触れて見た知識階級、又は文芸愛好者とも云うべき人々の間で、悦ばれていた二三の作家を思い出して見よう。 そう思って自分の読み度いと・・・ 宮本百合子 「最近悦ばれているものから」
・・・彼が、仕事を終って、一同の感謝と称讚にこたえて、謙遜に満足そうに笑うとき、拍手を制せられない感動をひとに与えると思う。だが、そのひとが、まさに火中に身を投じて、必死の活躍をしている時、何を考えていたろう。一途に救けようとしているものを救け出・・・ 宮本百合子 「祭日ならざる日々」
出典:青空文庫