・・・岩波の『哲学辞典』を入れたいと思って居ます。いねちゃんが何かいい本を買ってくれるそうです。 私のかいた第一信は何日かかってお手に入りましたか。キカイ体操はそちらにありますか? レンブラントのエッチングの絵はがきは届きましたか。ロンドンで・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・等にみられる通り、思想と行為の分裂やその二つのものの機械的な綯い合せの域を一歩進めて、生活全面の無目的な自転を、その文学の中に追跡している。その意味では、島木の文学の所謂健全性がその髄に飼っていてそこから蟻と蜚あぶらむしのような関係で液汁を・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・その複雑ないくつもの社会的な力の摩擦融合の根源は、世界史の一部分として生きているその国が、自身の存在のために日夜行っている自転と、自転しつつ二六時中国際的諸関係と接触してその間の関係に変化を生じさせている、その二つの重なりあった歴史から生じ・・・ 宮本百合子 「世代の価値」
・・・という言葉は逆宣伝的な意味にでも通俗化され、新語辞典に出て来る文字となった。プロレタリア作家がそのような階級的な而も卑俗化された好奇心を伴って興味をひく可能のある題材を扱う場合、何よりなすべきことは、「プロヴォカートル」というものの憎むべき・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価によせて」
・・・ 一寸何をしていいかわからなかったので、百科大辞典を片っぱしから見て行く、私はよく、一寸手のあいた時に、字引や言海を見るのがすきだけれどもこれもくせの一つとしてあげるべき筈のものだ。 机が大変よごれたので水色のラシャ紙をきって用うと・・・ 宮本百合子 「日記」
・・・ 一九五〇年〔渡辺泰輔宛〕 校正をおかえしいたします。 直したという以上にたくさんのところを削り、まことに御迷惑をかけました。 辞典類をかきなれないものですから、よみかえしてみると、これ一つで一つの文学史になってしまって・・・ 宮本百合子 「日記・書簡」
・・・、更に昨今の流行とてらし合せて私達の感想を更に一層刺戟するのは、一九三〇年、プロレタリア芸術運動が高まって綜合雑誌『ナップ』が発刊されていた頃、山田清三郎・川口浩両氏によって編輯されたプロレタリア文芸辞典について、試みにハの部を索いて見ると・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
出典:青空文庫