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・・・ 一郎はそこで鉄棒の下へ行って、じゃみ上がりというやり方で、無理やりに鉄棒の上にのぼり両腕をだんだん寄せて右の腕木に行くと、そこへ腰掛けてきのう三郎の行ったほうをじっと見おろして待っていました。谷川はそっちのほうへきらきら光ってながれて・・・
宮沢賢治
「風の又三郎」
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・・・見えない運動場の隅から響いて来るときの声、すぐ目の前で、「おーひとおぬけ、おーふたおぬけ、ぬけた、ちょんきり、おじゃみさーあくら」と調子をつけて唱う声々の錯綜。―― その声と光に包まれながら、自分が廊下をゆっくり、ゆっくり歩いて・・・
宮本百合子
「思い出すかずかず」