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・・・画家はそこにある情趣を現わそうともくろみ、そのために必要な自然の一面を雇って来るのである。時にはこの目的のために、すでに古い昔に様式化された山や樹の描き方を、巧妙に利用しようとさえもする。これらの選択や利用が、すべて画家のある想念に――主と・・・
和辻哲郎
「院展遠望」
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・・・そうしてそこには、確かに、我々の心の一角に触れる淡い情趣が生かされている。すなわち牧歌的とも名づくべき、子守歌を聞く小児の心のような、憧憬と哀愁とに充ちた、清らかな情趣である。氏はそれを半ばぼかした屋根や廂にも、麦をふるう人物の囲りの微妙な・・・
和辻哲郎
「院展日本画所感」