このたび、常任中央委員会によって発表された日和見主義との闘争に関する決議は、プロレタリア文学運動が今日到達したレーニン的立場に立っての分析の周密さ、きわめて率直な自己批判の態度などにおいて、非常にすぐれたものである。この決・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・プロレタリアートの党派性は勝利し、闘争の成果の一部は、最近作家同盟常任中央委員会が「右翼的偏向との闘争に関する決議」を発表するに至った事実にも認め得るのである。 同志小林は確固たる国際プロレタリアートの観点に立って今日の情勢を分析し、そ・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価に寄せて」
・・・長崎の方は情人、或は妻的、違う?」「其だけ、つまり性的に馴練されて居るわけだな」「地理的関係もあるから、ね。昔のオランダ人なんかは随分、そういう長崎婦人の美点をエンジョウイしたらしいことよ。幕府では、オランダ人が細君を連れて来ること・・・ 宮本百合子 「長崎の一瞥」
・・・作家同盟中央委員になり、〔七月〕常任中央委員になった。九月。プロレタリア文学運動では、日本の半封建的な社会事情によって婦人の社会上、文化上の重荷が非常に多く文学上の成長もはばまれている。この状態を特別考慮して婦人の、特に働く婦人、農村に・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・国文学者にとって必要な古文書、典籍などは、主として皇室の図書館や貴族の秘蔵にかかっており、常人にはそれを目で見ることさえ容易でない有様である。佐佐木信綱博士が万葉集の仕事を完成した時、些かでも専門の知識をもっている人々が歎賞した第一のことは・・・ 宮本百合子 「文学上の復古的提唱に対して」
・・・という理論は、常人にとって全く理解し難い。それを、「梶は日本の変化の凄まじさを今更美事だとまたここでも感服する」というのは、いかがしたことであろうか。「厨房日記」をよむと、この作者が外国でも日本でも、質のよくない情報者というか、消息通に・・・ 宮本百合子 「「迷いの末は」」
・・・そこで不老上人に乞うて妃を元の姿に行ないかえしてもらうということが、話の本筋にはいってくる。妃の蘇りにとって障げとなったのは、妃の首の骨がないことであった。王子はその首の骨を取り返すために宮廷に行き、祖父の王の千人の妃の首を切って母妃の仇を・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・この点においては彼は常人と区別がつかない。けれどもひとたび彼を楽器の前に据えれば彼はたちまち天才として諸君に迫って来る。しかし諸君の前に一人の黒人が現われたとする。一眼見れば直ちにその黒人である事がわかるだろう。デュウゼは黒人である。 ・・・ 和辻哲郎 「エレオノラ・デュウゼ」
・・・そういわれてみると、蓮の花が日光のささない時刻に、すなわち暗くて人に見えずまた人の見ない時刻に、開くのであるということ、そのために常人の判断に迷うような伝説が生じたのであるということが、やっとわかって来た。もちろん、日光のほかに気温も関係し・・・ 和辻哲郎 「巨椋池の蓮」
・・・は先生を駆使して常人以上に「生かせ」働かせた。ことに生死に対する無頓着はかえってこの創作家を強健ならしめたように見える。『明暗』を書いていた先生はある時「毎日すべったのころんだのとクダラない事を書いているのは、実際やり切れないね」と言った。・・・ 和辻哲郎 「夏目先生の追憶」
出典:青空文庫