・・・ 一風呂浴び、三十分程仮寝をすると、Yは、「ああ、やっとせいせいした」と云いながら元気に目を覚した。その声で、私も目を開いた。時間にすれば、僅三時間足らずの前に経験したばかりのことだのに、この福島屋の長崎港を見渡す畳の上で目・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
・・・現実に即した観察は、批判精神というものが決して抽象架空に存在し得るものではなくて、それどころか実に犇々と歴史のなかに息づき、生成し、変貌さえも辞せないものであることを理解させると思う。批判精神は情緒感性と切りはなされて存在し得るものどころか・・・ 宮本百合子 「文学精神と批判精神」
・・・これまで合法的組織として活動し、だんだん生成して来た「ナップ」を、それが国際的なプロレタリア文学運動に結びついているという点でひっかけ、挫き、無力なものとしようとするこんたんなのだ。「――議長! 緊急動議!」「はい」「さっき朝鮮・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
出典:青空文庫