・・・シドニー・フランクリンは、ムニやライナーを東洋人として演じさせるためにこまかい注意を払っているのであるが、私たち東洋の眼で見ていると、折々パッと異国の花が開いたようにライナーがほかならぬアメリカの最も尖端的な表情で立ち現れる瞬間がある。例え・・・ 宮本百合子 「映画の語る現実」
・・・このような、わかりきった情ない問題を、その一尖端として水面に露出させるところの見えない水面下の暗礁こそ問題なのである。」「だがわたしは絶望はしない。もしわれわれが本当に人間として基本的なものだけは守り通すという決意をもち、それが実践のために・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・不幸な露国皇帝が彼の死を死んだ運命の尖端 其から御飯を食べ、又少し本を見て、今改めて机に向った私は、もうすっかり先刻の重圧からは脱して、活気に満ちた心と、頭とを持って居ります。本が面白かった許りではなく、僅かな時の間に、彼程退屈だった雨・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・それは一人自分だけが感じているのではなく「日本の心の尖端である」と感じる。自己完成ということは、日本ブルジョア・デモクラシーの完成という点とかかわりあった課題であると理解し「科学的な操作による自己完成の追及の堆積」を決心している青年が描かれ・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・小市民的な主観性の中での先端、というような意味ではないと思います。文学においても、美術においても、小市民的な先端から、ほんとうに歴史を押し進めてゆく社会的階層の前衛としての本質に移ってゆくことは、芸術以前の生活において容易なことでないのと同・・・ 宮本百合子 「第一回日本アンデパンダン展批評」
・・・ドン・バスに何千と婦人労働者がいるがそれは選炭その他みんな地面の上での仕事をやっているのだ。 私は同志ドミトロフにつれられて、先ず大仕掛の動力室発電所へ入って行った。坑内の換気のため、エレベーターやトロを動すために、動力室では五人の熟練・・・ 宮本百合子 「ドン・バス炭坑区の「労働宮」」
一、伸子は 段々ひきつけられた、p.9「プロレタリアートは時代の先端を壮烈な情熱をもって進んでいる、しかも我々の前には過渡期の影が尚巨体をよこたえている」 一章一章が、青年らしい丹念さでまとめられている。・・・ 宮本百合子 「「敗北の文学」について」
・・・短波こそ、今日の電波の世界の尖端の活動をしているのである。 ラジオ・サービスとして移動ラジオ相談所を設けたり、明朗聴取運動をおこしたり、様々の点で聴取者の便宜は考えられている。そういう細部での便宜があればある程、聴取者の心持に、こういう・・・ 宮本百合子 「「ラジオ黄金時代」の底潮」
・・・ ネー将軍はナポレオンの背後から、ルクサンブールの空にその先端を消している虹の足を眺めていた。すると、ナポレオンは不意にネーの肩に手をかけた。「お前はヨーロッパを征服する奴は何者だと思う」「それは陛下が一番よく御存知でございまし・・・ 横光利一 「ナポレオンと田虫」
一 丘の先端の花の中で、透明な日光室が輝いていた。バルコオンの梯子は白い脊骨のように突き出ていた。彼は海から登る坂道を肺療院の方へ帰って来た。彼はこうして時々妻の傍から離れると外を歩き、また、妻の顔を新・・・ 横光利一 「花園の思想」
出典:青空文庫