・・・精神のラッシュにまぎれて、いかがわしい種々の操作が、今日では法律上の名目も失い、行政上の格式も失いながら、なお最下等動物のように執拗に、ぬけめない陋劣さで活躍していることも、人々が直感しているところである。 日本にとって、本当にすがすが・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・冷たい、理知だけの操作でない、対象との人間らしい共感においての観察という点の強調が、虫に頬かぶりをさせたり、草叢のアパッシュたらしめたりした。ファブルの伝記者は、アナトール・フランスがファブルの文章は悪文であると云ったということをおこってい・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・戦後、続出した新興出版事業者は、ほとんど例外なしに、この敗戦おきみやげたる紙の操作によって出発した。これらの事実については火野葦平のみならず、軍と「民間」との消息に通じた多くの人がもとより無智であろうはずはなかった。 まったく、「バクロ・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・自己完成ということは、日本ブルジョア・デモクラシーの完成という点とかかわりあった課題であると理解し「科学的な操作による自己完成の追及の堆積」を決心している青年が描かれているのです。 ここでこの作品が注目する価値をもっている点がはっきりし・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・ 非常に珍しく又危険と思われているパラシュート操作のようなことでも、優しく若い女性たちによって無事に敢行されると、そのことで人々は危険が案外少いことや自分たちの日常に親しめることのように感じるのは、女性の優しさに対して抱かれている先入観・・・ 宮本百合子 「空に咲く花」
・・・ これから数十回継続されてゆく立証段階で、よび出される百二、三十人の証人と、林弁護人の弁論中にあらわにされた検事団の偽証罪をかざした証人操作法とは、どのようにからみ合い、どのような情景を法廷にくりひろげてゆくだろうか。世論が公正に監視を・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・そして逮捕の理由を追求する被告に対して「捜査官は容疑の点というものはタネだ。タネをあかすことはできない。」渡辺警部はしきりに若い清水の意気をくじくための刺戟を与えた。共産党の「あの悪らつなやり方をみよ。都庁の事件をみろ。あれはお前の仲間がや・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・にしろ、「日本の芸術の基本的方法はイデエの根をもたぬ感覚によるのだから、近代風なイデエの操作と実作とは歯車が合わないのだ」という、現状解明の場にとどまりかねる思いがある。「巨大な冷酷な秩序のヒダにはさまれてもがく虫のような存在として自己を意・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
・・・この事件で検事局が警視庁の捜査本部へ殺人の方向で進めてくれと特に注文をつけ、捜査本部はかならずしも同調しなかったことは世人の記憶にあたらしい事実である。『読売新聞』は一貫して犯罪性を強調し、この裏に共産党ありと、あすにも犯人があがりそう・・・ 宮本百合子 「犯人」
・・・文化の上から見ればおくれている素質こそ、文明のある操作に便宜であるという、文化と文明とのきわめて微妙なさか立ちの形があらわされているのである。 これを、先にふれた婦人作家の擡頭という現象と今日の現実のうちで綜合して見わたすとき、日本の婦・・・ 宮本百合子 「婦人の文化的な創造力」
出典:青空文庫