・・・早瀬 …………お蔦 串戯じゃ、――貴方、なさそうねえ。早瀬 洒落や串戯で、こ、こんな事が。俺は夢になれと思っている。跡には二人さし合も、涙拭うて三千歳が、恨めしそうに顔を見て、お蔦 ほんとうなのねえ。早瀬 俺があやま・・・ 泉鏡花 「湯島の境内」
・・・そりゃそうと君も次が又出来たそうね、然も男子じゃ目出たいじゃないか」「や有難う。あの時は又念入りの御手紙ありがとう」「人間の変化は早いものなア。人の生涯も或階段へ踏みかけると、躊躇なく進行するから驚くよ。しかし其時々の現状を楽しんで・・・ 伊藤左千夫 「浜菊」
・・・ そうね、こうして自分の好む仕事をし、それによって少しずつでも生かされて行くとすれば、めぐまれた生活とでもいえるのでしょうよ。だけど創作といっても、苦しみの方が多いわ。人によっては、女は結婚を経なければ本当の人生が解らない。従って創作も・・・ 宮本百合子 「久野さんの死」
出典:青空文庫