・・・今日、疎開している人口は、どのくらいあるか、疎開した学生の数は何人あるだろうか。疎開した勤人、疎開している学生は、都会の住居難から、たいていは遠距離を通勤、通学している。その人達の交通費は、この度の国鉄の値上によって、非常な打撃を蒙る。或る・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・「買いだめ、疎開は必要か」「七万五千人の警察予備隊」と矢つぎ早の電光ニュースに奪われてしまっているところがある。けさの新聞には、「閃光を見るな、十秒間は伏せ」という原子委員会の警告さえのっている。 湯川秀樹博士は、このような軍事的発熱状・・・ 宮本百合子 「私の信条」
・・・ある日、梶は東北の疎開先にいる妻と山中の村で新聞を読んでいるとき、技術院総裁談として、わが国にも新武器として殺人光線が完成されようとしていたこと、その威力は三千メートルにまで達することが出来たが、発明者の一青年は敗戦の報を聞くと同時に、口惜・・・ 横光利一 「微笑」
出典:青空文庫