・・・また、一度はそこで女優になろうとして後作家となって盛名をうたわれ、幾何もなくアメリカに去った田村俊子氏の生活経緯を見て居られることもあって、女性と芸術生活との問題については、それが特に日本の社会での実際となった場合、進歩的な見解の半面にいつ・・・ 宮本百合子 「時代と人々」
小さき歩み ああ、しばらく、と挨拶をするような心持で、私は佐藤俊子氏の「小さき歩み」という小説を手にとった。この作者が田村という姓で小説を書いていた頃の写真の面影は、ふっさりと大きいひさし髪の下に、当・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
・・・封建的なしきたりに反対して女も人間である以上自分の才能を発揮し、感情の自主性をもってしかるべきものと主張した。田村俊子の文学は明治の中葉から大正にかけて日本の女がどういう方向で独立を求めたかという段階を示している。田村俊子の人間としての女の・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・丁度、田村俊子氏の生活が動揺し始めた頃であったと見え、非常に疲労の現れた作品を送ってよこしたということも聞いた。素木しづ氏も存生で、一人お子さんが生れた当時であった。生活が楽でなく、困り抜いた揚句であったろう。深夜、一台の俥に脚の不自由なし・・・ 宮本百合子 「狭い一側面」
・・・ 坂口安吾の文学は、毎月彼と関係のあるジャーナリストを呼んで大盤振舞いをするほど繁昌しています。田村泰次郎氏の肉体主義は彼にりっぱな邸宅を買わせたと新聞に出ました。戦災者や引揚者が住むに家なく警察の講堂に検束される形でやっと雨露をしのぐ・・・ 宮本百合子 「一九四七・八年の文壇」
・・・ 私は、婦人作家の中では独特な作風をもっていた田村俊子氏の、作家としての生活振りを思い出す。彼女は日本で極く短い期間にロマンチックな形で現れたインテリゲンツィアの婦人解放運動と前後して作家活動をはじめ、前の時代の自然主義の婦人作家が示さ・・・ 宮本百合子 「問に答えて」
・・・又三月には田村俊子、野上彌生子と合冊で『中條百合子集』が改造社から出版された。一月。作家同盟中央委員になり、〔七月〕常任中央委員になった。九月。プロレタリア文学運動では、日本の半封建的な社会事情によって婦人の社会上、文化上の重荷が非・・・ 宮本百合子 「年譜」
よほど以前のことになるが田村俊子氏の小説で、二人とも小説をかくことを仕事としている夫婦の生活があつかわれているものがあった。筋や、そのほかのことについてはもう思い出せないのであるが、今も焙きついた記憶となって私の心にのこっ・・・ 宮本百合子 「夫婦が作家である場合」
・・・ 永井荷風によって出発したジャーナリズムは、インフレーションの高波をくぐって生存を争うけわしさから、織田作之助、舟橋聖一、田村泰次郎、井上友一郎、その他のいわゆる肉体派の文学を繁栄させはじめた。池田みち子が婦人の肉体派の作家として登場し・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・そういうギャップが現実にあるから舟橋聖一・田村泰次郎がこの不況にトップをきって売れているのです。 ここにAさんという人があります。Aさんという人は工場に働いています。それで文学好きです。文学を好きだという人は必ずより人間的な要求をもって・・・ 宮本百合子 「平和運動と文学者」
出典:青空文庫