・・・ジイドは、赤い広場で行われたゴーリキイの感動的な葬儀に参加し、衷心からソヴェトの大衆に向って新世界に対する自己の傾倒を語り、それから約二ヵ月ソ連邦のあちらこちらを旅行した。「鋼鉄はいかに鍛えられたか」の著者、オストロフスキーをもわざわざ南露・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・そして、思えば、先生がいつとはなしに私に及ぼしたああいう深い人間的な感銘と、よりよい人生への願いはとりも直さず、若かった先生が御自身の女性としての生涯にも衷心から求めていられたものではなかっただろうか。 人及び女性としてのその真摯な希望・・・ 宮本百合子 「時代と人々」
・・・若い心の同感と鼓舞と共々な努力として、行動隊員が活動することを衷心から期待する。 不良への警告 真面目な親と娘たちにとって毎年のぞましからぬシーズンのおくりものがある。それは不良青年に対する警告である。けれども・・・ 宮本百合子 「女性週評」
・・・先ごろ来朝していた作家シーモノフが、日本の出版界にもそれを衷心から希望したとおり、ソヴェト同盟の出版事業は直接に人民文化の仕事として企画され運営されている。どうしてそんないい条件の『星』や『レーニングラード』が、くだらないゾシチェンコに叩頭・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・いま、わたしたちが、中国人民の勝利に対して衷心からのよろこびと友誼の感情を語るにつけ、日本の帝国主義が、中国解放のために最悪の妨害的存在以外の何ものでもなかったという事実を思いかえさずにはいられません。しかし、中国の人々は人民たる真情によっ・・・ 宮本百合子 「宋慶齢への手紙」
・・・櫛田さんが娘さんをそのような若妻としての位置において眺めて、衷心からともによろこび、安心することができたのは、母としての櫛田さんが何時の間にか広い社会的な活動の中に自分をおくようになっていたからではなかっただろうか。 父親に早く別れた男・・・ 宮本百合子 「その人の四年間」
・・・使者一 御注進です! 吉報を齎したお賞めの言葉を先ず下さい。使者二 悦び、悦び! 悦びヴィンダー ミーダ云え! 何事だ?使者一大地の神が眼を覚まそうとしています。 今朝人間界に舞い下りて、彼方此方ぶらついていると、・・・ 宮本百合子 「対話」
・・・ 子の為に生活するのでもなければ、親の為に生活するのでもなく、諸共に人として正しく幸福に生活して行き度いと云うのが彼等の衷心の希いである様に思われるのです。 勿論、これ等のことには、皆他の一面、他の消極があります。或る人は、それ程、・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・ みずから山河巨大な中国に生れ合わした人民の一人として、中国の民衆生活を衷心から愛し、おかれている苦渋の生活を哀惜し、その未来の運命の発展に対して限りない関心をもっている。そのこころが溢れている。ロシア文学史の十八世紀末から十九世紀の間・・・ 宮本百合子 「春桃」
・・・ ねえそうじゃあありませんか、 世の中の人が十(分の九十九まで自然の美くしさを非難したり馬鹿にしたって私だけはほんとうに二心のない忠臣で居られる。 私が或る時は守ってやり又或る時は守られる事が出来るまで私と自然の美くしさは近づい・・・ 宮本百合子 「千世子(三)」
出典:青空文庫