・・・私たちは今か今かと動員令を待ち受けています。」 しかし戦争にならなければそちらへ行けるでしょうと約束した月曜には、独軍が宣戦の布告もせずに武力に訴えながらベルギーを通過してフランスに侵入した。 パリの母は再び娘たちに書いた。「お・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・勤めがすんでから傍聴へ職場から動員されるように夜公判がひらかれることもありません。新聞では、こんどの帝国主義戦争がはじまってから、公判記事をまるでのせない日さえあるように狡く立ちまわっています。党員たちの闘争力と大衆の力で、形ばかりの公開公・・・ 宮本百合子 「共産党公判を傍聴して」
・・・芸術的良心を痲痺させてしまって出版業者に動員されて、てんから恥ない所がありはすまいか、出版当事者美術家ともに大いに良心を覚醒させる要があろう。 次にさしずめ世界文化年表とでも称する年表が欲しい。広い文化の分野でせまい分科的にではあるかも・・・ 宮本百合子 「業者と美術家の覚醒を促す」
・・・農家では、女と子供の働きが非常に動員された。ある場所では機械や牛馬の力も加えて、男のいないあとの耕地を女が働いてやっている。 海へ女がのり出して働かないという昔からの習慣は、その活動が女の体力にとって全然無理だからなのだろうか。それとも・・・ 宮本百合子 「漁村の婦人の生活」
・・・学校の女生徒たちは、学徒動員で働きに出て行かなければならないが、寄宿舎はやはり営まれていて、皆がそこに暮していた。 ところが駐屯して来た軍隊は、その学校の表門にかけてある看板が、生意気だ、今頃英学塾というような敵性語を教える看板を麗々し・・・ 宮本百合子 「結集」
・・・さもなくて、どうしてすべての若い女を勤労動員し、すべての学徒の、文科学生だけを前線にかり出すことが出来たろう。献金、献金、供出、供出と強要できたろう。八月十五日が来たとき、日本じゅうに灰色の煙をたててそれらの血ぬられた統計は焼却された。・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・コムソモールは生産部門の全線に自分たちを動員して、党外勤労者と集団的結束をかためた。然し勤労者の中には「十月」以後ソヴェト同盟で生産は生産のために行われているという羨むべき事実を理解しない「棒杭奴」もある。資本主義生産に奴隷として使われた時・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 会社は、ストライキをやった従業員を職場からだと目だつし、それをきっかけに又他の従業員が結束するとこわいので、各住居地の所轄署を動員して今朝一斉に切りはなして引っぱらせたというのが実際の情勢らしかった。 留置場の弁当では泣き出しなが・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・ 而も、ブルジョア・地主は処女会や御用雑誌その他のあらゆる反動文化機関を総動員して、婦人大衆の文化を昔ながらの奴隷的な低さで止めておこうと狡い計略をめぐらしている。 何ぞというと「何だ! 女の癖に生意気な!」とやっつけ、封建的な屈従・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・偉大な価値の評価が正当にされるようにされないということ、それが私の努力の動因です。単にまつり上げるのでなくて、一箇の芸術家は自分の才能をどのように生かして来たかどんな力ととり組み自身の矛盾ととりくんで来たかというその突き入るような分析、綜合・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
出典:青空文庫