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・・・ 彼等のすぐ後に、京都大学の学生が二人仲居をつれて見物していた。制服を着、帽子を胡座の上にのせ、浮れていた。地方の唄をすっかり暗誦していて合わせたり、「ほらほら、あれがそや」「ええなあ……恍惚する程ええやないか」 一菊と云う・・・
宮本百合子
「高台寺」
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・・・ 机はやっぱり昔ながらのテーブルで上には馬のついた紙おさえや、ガラスのペン皿やをおいてこれを書きはじめているのですが、あなたは、上落合のこの辺を御存知かしら。 中井駅という下落合の駅の次でおりて、小学校のつき当りの坂をのぼったすぐの・・・
宮本百合子
「獄中への手紙」