・・・若者は、金や、銀に、象眼をする術や、また陶器や、いろいろな木箱に、樹木や、人間の姿を焼き付ける術を習いました。 りんご畑には、朝晩、鳥がやってきました。子供は、よく口笛を吹いて、いろいろな鳥を集めました。そして、鳥の性質について若者に教・・・ 小川未明 「あほう鳥の鳴く日」
・・・また、電話をかけることを習いました。まだ田舎にいて、経験がなかったからです。山本薪炭商の主人は、先生からきいたごとく、さすがに苦労をしてきた人だけあって、はじめて田舎から出てきた賢一のめんどうをよくみてくれました。薪や炭や、石炭を生産地から・・・ 小川未明 「空晴れて」
・・・「そんなら、ひとりでに死んだのならいゝのですか」と、彼は問いかえしました。自然の死は、誰をとがむることもできないと私は答えた。すると、子供は、糸であまり遠く行かないようにして、せみを木にとまらせたのでした。 すべて、生き得る条件・・・ 小川未明 「近頃感じたこと」
・・・柔道を習いに宮枝は通った。社交ダンスよりも一石二鳥。初段、黒帯をしめ、もう殺される心配のない夜の道をガニ股で歩き、誰か手ごめにしてくれないかしら。スリルはあった。 ある夜、寂しい道。もしもし。男だ。一緒に歩きませんか。ええ。胸がドキドキ・・・ 織田作之助 「好奇心」
・・・酒も煙草も飲まず、ただそこらじゅう拭きまわるよりほかに何一つ道楽のなかった伊助が、横領されやしないかとひやひやしてきた寺田屋がはっきり自分のものになった今、はじめて浄瑠璃を習いたいというその気持に、登勢は胸が温まり、お習いやす、お習いやす…・・・ 織田作之助 「螢」
・・・しかしまだ習いたてだから何にも書けない。」「コロンブスは佳く出来ていたね、僕は驚いちゃッた。」 それから二人は連立って学校へ行った。この以後自分と志村は全く仲が善くなり、自分は心から志村の天才に服し、志村もまた元来が温順しい少年であ・・・ 国木田独歩 「画の悲み」
・・・否々彼も人の子なり、我子なり、吾に習いて巧みにうたい出る彼が声こそ聞かまほしけれ、少女一人乗せて月夜に舟こぐこともあらば彼も人の子なりその少女ふたたび見たき情起こさでやむべき、われにその情見ぬく眼ありかならずよそには見じ。 波止場に入り・・・ 国木田独歩 「源おじ」
・・・随分大勢習いに来るものもありました。男女とも一室で、何でも年の大きい女の傍に小さい男の児が坐るというような体になって居たので、自然小さいものは其傍に居る娘さん達の世話になったのです。私はお蝶さんという方を大層好いて居て、其方をたよりにばかり・・・ 幸田露伴 「少年時代」
・・・ところが世の中のお定まりで、思うようにはならぬ骰子の眼という習いだから仕方が無い、どうしてもこうしてもその女と別れなければならない、強いて情を張ればその娘のためにもなるまいという仕誼に差懸った。今考えても冷りとするような突き詰めた考えも発さ・・・ 幸田露伴 「太郎坊」
・・・かかるならいは、よその国々も少なからず、むかしの「かがい」ということなどの名残にもやあるべき。磐城の相馬のは流山ぶしの歌にひびき渡りて、その地に至りしことなき人もよく知ったることなるが、しかも彼処といい此処といい、そのまつる所のものの共に妙・・・ 幸田露伴 「知々夫紀行」
出典:青空文庫