-
・・・じつはさっきから、上手に寝たふりをして、王子が寝入るのをねらっていたのでした。 そしておき上るといきなり、ひょいと小さな鳩になって窓からとび出しました。王女はこういうじゆうじざいな魔法の力をもっているのです。これまで、どんな人が番に来て・・・
鈴木三重吉
「ぶくぶく長々火の目小僧」
-
・・・ あっちこっちの監房で身じろぎや、あくび、寝入る前の動きがある。何十日でも、日光の射さぬ板の間に坐ったぎりでいるから、体を横にするだけでさえ、手足がくつろぐのであった。 不図太鼓の音が南京虫にくわれて痒い耳についた。ドーン、ドン。ド・・・
宮本百合子
「刻々」