・・・このシャンデリヤ、おそらく御当家の女中さんが、廊下で、スイッチをひねった結果、さっと光の洪水、私の失言も何も一切合切ひっくるめて押し流し、まるで異った国の樹陰でぽかっと眼をさましたような思いで居られるこの機を逃さず、素知らぬ顔をして話題をか・・・ 太宰治 「喝采」
・・・そして二人がそのあかしの前を通って行くときはその小さな豆いろの火はちょうど挨拶でもするようにぽかっと消え二人が過ぎて行くときまた点くのでした。 ふりかえって見るとさっきの十字架はすっかり小さくなってしまいほんとうにもうそのまま胸にも吊さ・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
・・・ ひなげしはみんなあっけにとられてぽかっとそらをながめています。 ひのきがそこで云いました。「もう一足でおまえたちみんな頭をばりばり食われるとこだった。」「それだっていいじゃあないの。おせっかいのひのき」 もうまっ黒に見・・・ 宮沢賢治 「ひのきとひなげし」
・・・(ぜんたい雲というものは、風のぐあいで、行ったり来たりぽかっと無くなってみたり、俄 そのとき山男は、なんだかむやみに足とあたまが軽くなって、逆さまに空気のなかにうかぶような、へんな気もちになりました。もう山男こそ雲助のように、風にな・・・ 宮沢賢治 「山男の四月」
出典:青空文庫