・・・社会主義の社会の建設と、その中からうまれる芸術、文学は、よしやはじめはアンデルセンの物語にあるように「みっともない白鳥のひよこ」であるかもしれないけれども、それは遂に白鳥として成長しずにはいられない。はじめから真白くて可愛くて愛嬌のある雛が・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第九巻)」
・・・ 何故みっともない真似をするんです? また、嫉妬してる。あなたは私が誰かと話してるのを平気で見ていられないの?」 ドミトリーは、インガがいくら説明しても二言目には、「俺はああいう風な教育はないんだ」と云う。「我慢がならないんだ。――・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
・・・は母性と私有財産制のみっともない結びつきを革命的に截断し、がっちり社会主義社会連帯の間に母性を組みなおした。職業組合に属さぬ勤労婦人はない。生れて、彼を社会成員として受けいれる組織をもたぬ赤坊はない。 これだけのことを知って、みなさん、・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・この頃、誰の真似だか知りませんが、変にずるずると髪をまいたり、大きいたすきをかけたりなさる方があるようですが、みっともないからおやめなさい。 少くとも一つだけの愉しみは学校にも在るようになった。私は級で一番の前列だったから、まるで自分ひ・・・ 宮本百合子 「時代と人々」
・・・その人が、林学について語らずに、貯蓄法について語っていることを、吾もひともみっともない妙なことと感じない感覚というものは、日本のどういう文化・科学性を語っているのだろうかと思った。林学専門なら山がよく鑑定されるわけだろう。その直接間接の売買・・・ 宮本百合子 「市民の生活と科学」
・・・ 今年の秋は、いつになく菊をあつめたので、その霜枯れてみっともない姿が垣根にそうてズラリとならんで居る。 茶色の根の囲りに土の中から、浅いみどりの芽がチョンビリのぞいて居るのが、いかにもたのもしく又いじらしく見える。 木が多いの・・・ 宮本百合子 「霜柱」
・・・その肌に添わないところを、社会科学の立場と文学の立場から綜合的に研究して落ついた結論を出すひまのないうちに一九三二年の春の全文化団体への弾圧があり、社会主義的リアリズム論争は、最もみじめなまたみっともない形で、文学における進歩性と階級性の否・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・だらけの老婆の顔の様にみっともない。祖母と女中は物ずきだと云って随分止めたけれ共、私は、傘をさして足駄を履き、ブルブルしながら庭の一番深く積って居そうな処々を選んで歩き廻った。皮膚に粟が出来て、唇が紫になり、いつも私がいやがって居る通りに鼻・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・におさめられているものだが、芭蕉という芸術家が、日本の美感の一人の選手だから、教養の問題として、それがわからないというのはみっともない、そういう気持にかかずらうことはちっともいらないと思う。私たちの今日に生きている感覚に訴えるものをもってい・・・ 宮本百合子 「芭蕉について」
・・・ 日本服というものを、末梢的にこねくって不徹底なみっともないものにするよりも、働くための服装は思い切って東西を問わないその人々の仕事にふさわしいものに変化させて行ったらいいのだろうと思う。〔一九四一年四月〕・・・ 宮本百合子 「働くために」
出典:青空文庫