・・・ 思えば、戦争中、私たち全日本人は「滅私奉公」という一字で、万端をしめくくられて来ました。けれども、今日になって、その時をかえりみれば、「私」を滅して、命までを捧げるべき「公」と云われたものの本体は、たった一握りの特権者たちの、「私・・・ 宮本百合子 「公のことと私のこと」
・・・ 最近十数年間、日本人は「滅私」という標語で統一しようとされて来た。近代社会の必然として、いくらかは日本にも生れた合理主義的な傾向、他人の考えが自分の考えと違うからと云ってそれは当り前のことと理解する自由主義の傾向、更に、歴史の進展は抑・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
・・・「一億一心」「滅私奉公」「八紘一宇」のスローガンを、かりにも批判し分析する者は非国民とされ国賊とされ、赤とされた。そして、治安維持法と戦時特別取締法とが、大きい残虐な口をあいて、それらの人々を噛みくだいた。見せしめとして。人々の理性を、恐怖・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
出典:青空文庫