・・・以上のような読み方をするのはアカデミックな言語学者から見れば言語道断な乱暴な所業であるに相違ない。しかし古代の人間は文法も音韻方則も何も知らなかった。明治の日本人がステンショとかオーフルコートとか称したことを考え、昭和の吾々がビルジングとか・・・ 寺田寅彦 「短歌の詩形」
・・・しかしアカデミックな芸術に食傷したものの眼には不思議な慰安と憧憬を感ぜしめる。これはただ牛肉の後に沢庵といいうような意味のものではなく、もっとずっと深い内面的の理由による事と思う。美学者や心理学者はこれに対してどういう見解を下しているか知ら・・・ 寺田寅彦 「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」
・・・ても工学者の計算によって相当な風圧を考慮し若干の安全係数をかけて設計してあるはずであるが、変化のはげしい風圧を静力学的に考え、しかもロビンソン風速計で測った平均風速だけを目安にして勘定したりするようなアカデミックな方法によって作ったものでは・・・ 寺田寅彦 「天災と国防」
・・・その時自分の感じた事は、その鉛筆画が普通のアカデミックなデッサンとはどこか行き方が違っているという事であった。 いよいよ本式にカンヴァスに筆を取り始めてからも、二、三度見に行った。そしてその描いている時の様子の真剣なのに驚かされた。下絵・・・ 寺田寅彦 「中村彝氏の追憶」
・・・一方ではまたわが国の科学者がおりにふれてはそのいわゆるアカデミックな洞窟をいでて火災現象の基礎科学的研究にも相当の注意を払うことを希望したいと思う次第である。 まさにこの稿を書きおわらんとしているきょう四月五日の夕刊を見るとこの日午前十・・・ 寺田寅彦 「函館の大火について」
・・・そういう革命的の仕事は、おそらくアカデミックな学者の手によってではなく、意外な方面の人の自由な頭脳によってなし遂げられはしないかという気がする。 物理学圏外の物理現象に関する実験的研究には、多くの場合に必ずしも高価な器械や豊富な設備を要・・・ 寺田寅彦 「物理学圏外の物理的現象」
・・・しかし、そういう一番肝心な基礎的なことがよく分からないで枝葉のデテールをごたごたに暗記して、それで高等学校の入学試験をパスし、大学の関門を潜り、そうして極めてスペシァルなアカデミックな教育を受けて天晴れ学士となり、そうしてしかも、実はその専・・・ 寺田寅彦 「マーカス・ショーとレビュー式教育」
・・・若くてのんきで自由な頭脳を所有する学生諸君が暑苦しい研学の道程であまりに濃厚になったであろうと思われる血液を少しばかり薄めるための一杯のソーダ水として、あるいはまたアカデミックな精白米の滋味に食い飽きて一種のヴィタミン欠乏症にかかる恐れのあ・・・ 寺田寅彦 「量的と質的と統計的と」
・・・彼らはただ現時の最高のアカデミックの課程を修得したルクレチウスにほかならないのである。 エネルギー不滅論の祖とせらるるロベルト・マイアーは最もよくルクレチウスの衣鉢を伝えた後裔であった。しかし彼は不幸にしてその当代の物理学に精通しなかっ・・・ 寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
・・・しかし如何なるアカデミックな大家にも劣らぬ古典的な仕事をした。彼は「英国の田舎貴族」と「物理学」との配偶によってのみ生み出され得べき特産物であった。吾々は彼の生涯の記録と彼の全集とを左右に置いて較べて見るときに、始めて彼の真面目が明らかにな・・・ 寺田寅彦 「レーリー卿(Lord Rayleigh)」
出典:青空文庫