・・・「おや、きょうは、お一人? おめずらしい。」「カルピスを、おくれ。」おおいに若々しいものを飲んでみたかった。 茶店の床几にあぐらをかいて、ゆっくりカルピスを啜ってみても、私は、やはり三十二歳の下手な小説家に過ぎなかった。少しも、・・・ 太宰治 「乞食学生」
・・・ カルピスくらいじゃあとてもおっつかないわ!」「ハハハ、そのカルピスももうありゃあしない。さあ、垣根のところへ行って来なさい」 二人は、悲しき滑稽で大笑いをした。カルピスを、引越して間もなくその隣から貰った。やかましくする挨拶として・・・ 宮本百合子 「この夏」
・・・かの子さんはそのときお盆にのせてカルピスのお湯にとかしたのを出してくれた。ああ、これがカルピス? と私は笑ったように思う。一平さんが、人生漫画を描いていられる頃であったか、カルピスは初恋の味というような文句のついたユーモラスな絵が一平画とサ・・・ 宮本百合子 「作品の血脈」
出典:青空文庫