・・・アサヒグラフか何かに、この女株式会社の女重役連の顔合わせの宴会の写真がのっていた。私はその写真を見て、立派な裾模様の上にのっている白粉の濃い女の顔の表情に、衣裳によって引立てられるほどの美も漂っていないのに或る感想を刺戟されたのであった。・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・ まずわれらの『働く婦人』について 日本プロレタリア文化連盟が一九三一年九月に結成されると同時に、出版所は機関誌『プロレタリア文化』のほか、三つの階級的啓蒙大衆雑誌と「グラフ」とを刊行して行く計画を発表した。・・・ 宮本百合子 「婦人雑誌の問題」
・・・戦時中日本の政府は、侵略主義の本質を、見ための珍しい美しさや異国情緒でカムフラージュしようとして日本独特の風俗、行事のグラフを盛に輸出した。アジアにおけるきょうの日本の、まじめな人民の重大な苦悩や努力をそのかいどりの大きい裾でかくすように、・・・ 宮本百合子 「婦人デーとひな祭」
・・・小説から、和歌から、ふと眼に入るグラフまで、戦争を讚美しないものがあったろうか。今日になれば、それは全く嘘とわかった「皇軍の勝利」を描き出さないものがあったろうか。 こうして、現実の敗北と架空な戦勝との不思議な絡い合せのまま時が経つうち・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫