・・・文学はこれらの天然の産物が人間社会の関係の中で人に働かされまた人を動かしている姿において描くのは当然だが、アメリカの作家シンクレアに「石油」がありやはりアメリカの婦人作家アリス・ホバードに「支那ランプの石油」があるのも興味がある。アメリカの・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・近々シンクレアの『ジャングル』を入れます。 九月十三日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 駒込林町より〕 第十二信 九月十三日 日曜日午後 ああ、あしたは日曜日であると思う。そして、今朝、起きるとすぐ食堂へ下りて行って来信のところ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・によって日本の文学のために極めて意義ふかい発足を行い、ゴーゴリ、ゴーリキイ、ガルシン、アンドレーエフなどの作品を翻訳紹介しつつ三十九年には「其面影」四十年には「平凡」と創作の業績を重ねながら、目前の日本文学一般がおくれていることへの不満のは・・・ 宮本百合子 「生活者としての成長」
・・・ ブルジョアの婦人雑誌は、われわれ働く婦人のそういう沢山の望みを決してシンからみたしてはくれません。わたし達は、ほんとに自分達の日常生活の友となり役に立つ知識と勇気と楽しみとを与えてくれる婦人雑誌が欲しいのです。 それにはこれまで『・・・ 宮本百合子 「発刊の言葉」
・・・ なりに似合わないシンミリした声でお妙ちゃんは云って居た。こんな人達にあり勝な何となくうきうきしたパッとしたとこは少なくてしんみりと内気な娘と話して居るのと少しもちがった事はない。「貴方割合にうち気な方だ事どうしてでしょう?」「そう・・・ 宮本百合子 「ひな勇はん」
・・・しかし時のたつとともに、私は彼らがシンミリした愛情を求めていないのに気づいた。彼らが尚ぶのは酔歓であった、狂気であった、機智であった、露骨であった。すべて陽気と名の付かないものは、彼らの心を喜ばせるに足りなかった。彼らは胸に沁み入る静かな愛・・・ 和辻哲郎 「転向」
出典:青空文庫