・・・のために貢献するために生きたいという希望、そのために知能をもゆたかにしたいという希望を抱いて努力している事実は、いわば地球の動きのようなもので、いつかはそれが承認され具現する可能に向って、今日の文化はジグザグなりに動いていると思う。人間の社・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・ 目で見る現在の景色と断れ断れな過去の印象のジグザグが、すーっとレンズが過去に向って縮むにつれ、由子の心の中で統一した。 * 由子はお千代ちゃんという友達を持っていた。由子の唯一の仲よしであった。由子が小・・・ 宮本百合子 「毛の指環」
・・・ いずれ永いジグザグの道を経た上でのことだろうが、女の幸福の問題はやがて次第にその局部的な、しかしきわめてその社会の基本的なありようと関係しあった特殊性を高めひろげ、揚棄して行って、いつかは人間の幸福についての具体的な条件の一つとして、・・・ 宮本百合子 「幸福の感覚」
・・・日本の民主化は非常にジグザグなコースをとって根気づよく、人民の力によって行われなければならない内外の事情におかれている。文学もこの事実からきりはなして語られることではない。 文学が人間生活に対する理解と共感とにたつ愛と努力の社会的な行為・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
・・・〔伏字二十八字〕ロシア民衆の生活がいかなるジグザグの道をとおり、流血と犠牲をもって十月革命の大道へ辿りつき、更にその道を前へ前へと進んでいるかということを、その多様さ、複雑さ、矛盾のままの姿で描いた作家は、ゴーリキイなのである。 一九三・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・ 然し、みのえはジグザグ裏通りの狭いところを通って、女学校の往きに、時々油井の家へよった。会社員である油井も、電車へ八時半に乗らねばならぬ。「一緒に行かない?」 或る朝、みのえは赤い鞣皮の財布から五十銭出し、小さい一つの花束を買・・・ 宮本百合子 「未開な風景」
出典:青空文庫