・・・ 時に――目の下の森につつまれた谷の中から、一セイして、高らかに簫の笛が雲の峯に響いた。 ……話の中に、稽古の弟子も帰ったと言った。――あの主人は、簫を吹くのであるか。……そういえば、余りと言えば見馴れない風俗だから、見た目をさえ疑・・・ 泉鏡花 「二、三羽――十二、三羽」
・・・I say ! Herr Meister ! Far away, far away ! One dollar, all dive ! などと言っているらしい。自分はどうしても銭をなげる気になれなかった。 船が出る時桟橋に立った見送りの一・・・ 寺田寅彦 「旅日記から(明治四十二年)」
・・・「そうですね、新聞に出ていましたが、オキナワレットウにハッセイしたテイキアツは次第にホクホクセイのほうへシンコウ……。」「エヘン、エヘン。」クねずみはまたいやなせきばらいをやりましたので、タねずみはこんどというこんどはすっかりびっく・・・ 宮沢賢治 「クねずみ」
・・・とこぼし、更に「おまけに、お前が気が弱くなったのは、体が弱ってきたセイってよりも、むしろ恐慌のセイらしいぞ」と弱気な、非闘争的なダラ幹魔術にかかっているような述懐をもらしたかと思うと、忽然として次の行では作者はそのチャーリーに「収入が減った・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
出典:青空文庫