・・・のニュースが見つからない場合に、めんどうな脚色と演出によって最もセンセーショナルな社会面記事に値するような活劇的事件を実際にもちあがらせそれがためにかわいそうな犠牲者を幾人も出したことさえ昔はあったといううわさを聞いたことがある。ジャーナリ・・・ 寺田寅彦 「ジャーナリズム雑感」
・・・新聞の醸成したセンセーショナルな事件は珍しくもない。例えば三原山の火口に人を呼ぶ死神などもみんな新聞の反古の中から生れたものであることは周知のことである。 第三十八段、名利の欲望を脱却すべきを説く条など、平凡な有りふれの消極的名利観のよ・・・ 寺田寅彦 「徒然草の鑑賞」
・・・ 風俗小説が、その世相複写の一定の限界に達してくれば、それらの作者の生活範囲での種さがしと、センセーショナルな事件をあさる職業心理はさけがたいだろう。一九四九年は、この面でも、これまでの文学の場面にはなかった奇怪なモデル出入りが発生した・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・ 十一月十八日の第二回公判をひかえて、竹内被告の上申書は読売新聞独特の特色を発揮して出来るだけセンセーショナルに扱われたのであったが、翌十六日の朝の毎日新聞には「謎包む二つの手記」「変転する竹内被告の心境」というまた別の記事があらわれた・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・日日は、頻りに投票ハガキの多いこと、為に中央郵便局の消印機が過熱して使用に堪えぬとか、コンクリートの五階が潰れるとか、センセーショナルな記事をかかげる。都会に起ることは知識階級の注意を呼び醒し易いが、この新八景投票のように地方を中心としてい・・・ 宮本百合子 「夏遠き山」
・・・少し号外の調子がセンセーショナルすぎることを感じたのであった。然し、どっち道、全市の電燈、瓦斯、水道が止ったと云う丈でも一大事である。真暗な東京を考えるだけで、ふだんの東京を知っているものは心は怯える。 人々は、口々に、「此方に来ていて・・・ 宮本百合子 「私の覚え書」
出典:青空文庫