・・・「ソップも牛乳もおさまった? そりゃ今日は大出来だね。まあ精々食べるようにならなくっちゃいけない。」「これで薬さえ通ると好いんですが、薬はすぐに吐いてしまうんでね。」 こう云う会話も耳へはいった。今朝は食事前に彼が行って見ると、・・・ 芥川竜之介 「お律と子等と」
・・・そうして、牛乳やいわゆるソップがどうにも臭くって飲めず、飲めばきっと嘔吐したり下痢したりするという古風な趣味の人の多かったころであった。もっともそのころでもモダーンなハイカラな人もたくさんあって、たとえば当時通学していた番町小学校の同級生の・・・ 寺田寅彦 「コーヒー哲学序説」
・・・筆記しおえた処へ母が来て、ソップは来て居るのぞなというた。〔『ホトトギス』第五巻第十一号 明治35・9・20〕 正岡子規 「九月十四日の朝」
・・・この時虚子が来てくれてその後碧梧桐も来てくれて看護の手は充分に届いたのであるが、余は非常な衰弱で一杯の牛乳も一杯のソップも飲む事が出来なんだ。そこで医者の許しを得て、少しばかりのいちごを食う事を許されて、毎朝こればかりは闕かした事がなかった・・・ 正岡子規 「くだもの」
・・・「オイオイ君ソップがさめるヨ。」「なるほどこれは旨い。病室で飲むソップとは大違いだ。」「寝台附の車というのはこれだな。こんな風に寐たり起きたりしておれば汽車の旅も楽なもんだ。この辺の両側の眺望はちっとも昔と変らないヨ。こんな煉瓦もあ・・・ 正岡子規 「初夢」
出典:青空文庫