・・・そのとき、フランスからロマン・ロラン、バルビュス、マルローその他の作家が招待された。招待された作家たちの全部が出席することは出来なかったらしいけれども、この大会が与えた文化の守りについての深い感動と認識にたって、翌る年の一九三五年六月にパリ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・ライン沿岸地方は、未開なその時代のゲルマン人の間にまず文明をうけ入れ、ついで近代ドイツの発達と、世界の社会運動史の上に大切な役割りを持つ地方となった。早くから商業が発達し、学問が進み、人間の独立と自由とを愛する気風が培われていたライン州では・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・それはマンの旅行記をよんでも分る。 宮本百合子 「観光について」
・・・ トーマス・マンの「魔の山」は、スウィスの豪奢な療養所内の男女患者の生活を描いているが、この手のこんだ心理小説も、結核とたたかう地道な人々の人生を語るものではない。 わたしが、これをかいている机の上にのっている十篇の原稿は、これらの・・・ 宮本百合子 「『健康会議』創作選評」
・・・手拭を姉さんかぶりにした若い農婦が、マンノーをとって争議に参加するばかりでない。女工さんの自主的なストライキが勇敢に闘われるばかりではない。今や、プロレタリアート・農民の婦人は出産の床の中に、八百屋で買う一本の葱の中にまで、自身の熱い階級闘・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・ワン・マン彼自身が国際茶坊主頭である。茶坊主政治は、護符をいただいては、それを一枚一枚とポツダム宣言の上に貼りつけ、憲法の本質を封じ、人権憲章はただの文章ででもあるかのように、屈従の鳥居を次から次へ建てつらねた。 おととしの十二月二十日・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・ その他に今解っている作品集は “The Man of Property.” “The Country House.” “Fraternity.” “The Dark Flower.” “Five Tales.”・・・ 宮本百合子 「最近悦ばれているものから」
・・・ ここはいつもリンツマンの檀那の通る所である。リンツマンの檀那と云うのは鞣皮製造所の会計主任で、毎週土曜日には職人にやる給料を持ってここを通るのである。 この檀那に一本お見舞申して、金を捲き上げようと云う料簡で、ツァウォツキイは鉄道・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「破落戸の昇天」
・・・これは Man is mortal を言い換えたに過ぎないが、しかし特に私の胸を突く。そうだ、ただ日がきまらないだけだ。死の宣告はもう下っている。私たちはのんきにしていられるわけのものではない。私たちは生きている一日一日を感謝しなければなら・・・ 和辻哲郎 「停車場で感じたこと」
・・・世人がすべてこれに傾向する時 To thee be all man Hero の境地はますます明らかになるであろう。ソシアリティの本義も恐らくはここである。深山に俗塵を離れて燎乱と咲く桜花が一片散り二片散り清けき谷の流れに浮かびて山をめぐり・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫