・・・ そのほかロシヤでも、よゆうの少い沿海州の市民たちでさえも、全力をあげて日本を救えとさけび、フランス、イタリー、メキシコ、オーストラリヤでは、日をきめて興行物一さいをさしひかえ各戸に半旗を上げて、日本の不幸に同情を表し、義えん金を集めま・・・ 鈴木三重吉 「大震火災記」
・・・勲章を発明した。メキシコの銀貨に穴をあけて赤い絹紐を通し、家族に於いて、その一週間もっとも功労のあったものに、之を贈呈するという案である。誰も、あまり欲しがらなかった。その勲章をもらったが最後、その一週間は、家に在るとき必ず胸に吊り下げてい・・・ 太宰治 「ろまん燈籠」
・・・ 二十二日 メキシコ アリゾナ 二十三日 L. A. 着、あの心持 San Gabriel を見物 二十四日 ドクターヒアスに呼ばれる。 二十五日 CC夫人ポーリンとワシントンに立つ。送る。 CCの・・・ 宮本百合子 「「黄銅時代」創作メモ」
・・・或はヨーロッパ文明にあきた女性に対して、より原始的生物のエネルギーにみちたメキシコ土人の男が出現する。 わたしたちは、ここにD・H・ローレンスという作家の秘密の母斑を見る。彼は、人間性の課題としての性の解放を、上流の男女の冷淡で偽善的な・・・ 宮本百合子 「傷だらけの足」
・・・鍔広のメキシコ帽をかぶり…… 空は水蒸気の多い水浅黄だ。植物は互に縺れこんぐらかって悩ましく鬱葱としている。彼の飾帯はその裡で真紅であった。強烈な色彩がいつまでも、遠くから見えた。――ミシシッピイ――〔一九二四年十一月〕・・・ 宮本百合子 「翔び去る印象」
出典:青空文庫