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・・・ そのつめたい水の底まで、ラムネの瓶の月光がいっぱいに透とおり天井では波が青じろい火を、燃したり消したりしているよう、あたりはしんとして、ただいかにも遠くからというように、その波の音がひびいて来るだけです。 蟹の子供らは、あんまり月・・・
宮沢賢治
「やまなし」
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・・・夏の日に私は一度君を尋ねて、ラムネを馳走せられたことがある。 年の暮に鍛冶町の家主が急に家賃を上げたので、私は京町へ引き越した。いとぐるまの音のする家から、太鼓の音のする家に移ったのである。京町は小倉の遊女町の裏通になっていて、絶えず三・・・
森鴎外
「二人の友」