・・・ヴィクトリアパークの前のレストランでラムネを飲んでいたら、給仕の土人が貝多羅の葉で作った大きな団扇でそばからあおいだ。馬丁にも一杯飲ませてやったら、亭前の花園の黄色い花を一輪ずつとってくれた。N氏がそれを襟のボタン穴にさしたからT氏と自分も・・・ 寺田寅彦 「旅日記から(明治四十二年)」
・・・ そして玄関にはRESTAURANT西洋料理店WILDCAT HOUSE山猫軒という札がでていました。「君、ちょうどいい。ここはこれでなかなか開けてるんだ。入ろうじゃないか」「おや、こんなとこにおかし・・・ 宮沢賢治 「注文の多い料理店」
・・・海面に張り出して、からりとした人民保養委員会のレストランなども見えているが、どういう訳か遊歩道には前にも後にも人が疎で、海から吹いて来る強い風に、コックの白上衣が繩につられてはためいている。 海沿いの公園では夾竹桃が真盛りであった。わき・・・ 宮本百合子 「石油の都バクーへ」
・・・丁度地震の三十分ほど前内外ビルディングに居、人に会うために、ヤマトと云うレストランの地下室で電話帳を見て居た。ところへひどくゆれて来、ガチャガチャ器具のこわれる音がする。父上は、多分客や Waiter があわてて皿や何かをこわしたのだろうと・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
・・・ 今日は朝ピヤチゴルスクを出て、今はミネラーリヌイヴォドイというステーションのレストランでこのハガキを書いています。今夜はウラジカフカアズというコーカサス越えの手前の都会へゆきます。ウラジカフカアズから一日コーカサスの山越えをしてグルジ・・・ 宮本百合子 「ロシアの旅より」
・・・只今通りすぎつつあるのはロンドンの最もしゃれたレストランの一つ、フラスカテイであります。フラスカテイー!」叫んでいる時にロンドンが夜になった。 遊覧自動車はそれから東へ東へととって肉市場スミス市場のアーク燈に照らされた白い鉄骨アーケード・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫